みなさま、こんにちは。おくむら(@nori_broccoli)です。
私が大学の頃に授業を受けていたときは、授業中に配られる小さな紙にちょっとしたコメントを書いて、それが出席代わりになるみたいなシステムでした。そして、そのコメントに対して、何かしらの応答があることは稀で、「あああああああ・・・」と書いていてもマジメに書いていても差がなかったのを思い出します。
最近はアンケートを採ったり記述させるならそれを活用する方向でとよく言われますし、授業評価アンケートなどは分析結果を開示して授業改善に役立てるよう言われています。確かに、学生の立場からすれば一生懸命コメントしたことに対して何のレスポンスも得られないと寂しいものです。
私はどの授業でも必ず全てのコメントに目を通して、重複を除いて全てに何かしらコメントを返しています。これは、少人数制の授業だからできることではありますが、少人数制ならむしろ積極的にやらない手もありません。授業中に分からなかったことから、他の授業で困っていることまでいろいろ学生さんの状況が分かるので、教える側としてもありがたいことです。
そうやって取得したアンケートは、学生さんとの双方向のやり取りを実現するだけではなく、量が集まってくるとそれそのものに価値が出てきます。大量の文章となれば言語処理の出番で、クラスタリングしたり分類したり色々遊んでみたくなってきます。幸い、授業内容に「AI・ビッグデータ」の項目があるので、その項目に合わせてアンケートの分析を実演するみたいなことに取り組んでいます。
今季の授業では「クラスタリング」を題材に、クラスタリングの手法を説明しつつ、実際にテキストからクラスタを生成し、学生さん同士で「どうしてそのクラスタが出来上がったのか」を自分のコメント(厳密にはコメントから抽出された単語)から考えてもらうということをやっています。コレが結構面白くて、普段一緒に居るメンバーが必ずしも一緒になるわけではなく、初めて話をするタイプの学生さん同士がクラスタになることも多々あります。
クラスタリングに使う特徴量は埋め込みベクトルの平均値という何のひねりもないものを使っていて、工夫すればいくらでも結果を変えられますが、シンプルなものでやってもらっています(単語の類似度しか見ていないと言えば学生さんも考えやすくなる)。
実際授業中に出席者に合わせてクラスタ数を決めて、授業に参加している人が話し合いできるようにしています。そうしないと、教室に来ていない人とクラスタになって相談できない・・・みたいになってしまいます。ですので、出席者によってクラスタリングの結果が変わってきますから、プログラムを実行するまで何が起きるか分からないのも面白い(そして怖い)ところです。
集まった瞬間に単語リストを見なくてもクラスタの意味が分かるほどの仲良しクラスタができることもあれば、どうして集まったのかもサッパリ分からない、でも単語を見れば分かるというものもあります。皆目見当が付かないものもできます。そういう中で、あぁでもないこうでもないと考えてもらうのはとても面白い時間です。
AIは何でもかんでも自動化するようなものではなく、人間の作業を手助けして、人間の意思決定を支援するようなものもたくさんあることを知ってもらう良いきっかけになります。いろんなところにクラスタリングは活用されていますから、そういうものに触れる機会を得たり、自分の書いたものが実際に分析に使われるとどういうことになるかを意識したりできるようになるのは良いことですね。
こういう体験型の授業もできるだけ取り込んでいきたいなと思っています。自分が出した何かしらのデータから出てくるものだと興味もわきますよね。生き物なので、何が起きるか分からない怖さはあるものの、話術でカバーするのもまた技術の一つです。こういった体験を通じて得られる学びを大切にしたいなと思っています。