みなさま、こんにちは。おくむら(@nori_broccoli)です。
もう何度目になるでしょうか。退職のお知らせを書くことになるのは。
本日、2025/03/31をもちまして、現職の神戸松蔭女子学院大学を退職いたしました。テニュアトラック教員として採用されて3年間勤務いたしました。松蔭でテニュアを取るのが早いか、テニュアの職を見付けるのが早いかという状況で、テニュアの職をいただけることとなり、2024年度を以て退職する流れとなりました。
私は元々大学院修了後、高専に勤務しており、高専自体はそもそも任期なしポストでしたので、新卒(と言っても28歳のオッサン)の頃から任期は気にすることなく仕事をしていました。なかなか地元の学校にポストがちょうど良く空くなどということはなく、遠方の高専から徐々に距離を詰めていき、最終的には地元の高専に勤務できるようになりました。しかし、「人事交流」という制度で異動したため年限があり、元の勤務地へ戻る必要があったことから、地元で仕事を探し続けていました。
地元で仕事を探すとなると、人事交流で異動した高専に転属させてもらうよう調製できるか、あるいはもう一つある公立の高専を考えるか、高専を出て大学にチャレンジするかという選択になります。一般企業はあまり考えていなくて、学術機関に身を置きたいと思っていましたので、なかなか狭き門ではありますがいろいろ探しておりました。そんな折、とある私立大学から任期付ではあるもののオファーをいただくことができ、任期なしの高専を辞めるか、任期付の仕事を選ぶかという、家庭を持つ身としては厳しい決断を迫られることになりました。
当然ですが、家族とは何日も相談しました。しかし、相談を持ちかけた最初の段階から「挑戦しろよ!」と言ってくれていたパートナーと、やや慎重論を持っていた私とで、一体どちらの方が不安になっているのだろうか・・・と思いながら話し合いをし、お互いの両親共に近所にいるという将来的なことも見据えた上で何としても地元に残るぞ、という強い意志の元、オファーを受ける決断をしました。武者修行の始まりです。
本来、大学教員を目指す若手であれば、新卒の段階でポスドクを経験したり、任期ありの助教の経験から積んでいくことになるのだと思います。私はその部分を10年ぐらい任期なしのぬるま湯で過ごしてきたため、任期付のポストというのが如何に厳しい状況であるかということを、家族を養いながら感じていました。私の仕事がなくなってしまえば家族を養うことができない、学術機関を離れて全く違う仕事も考えないといけないかもしれない、そんなことで毎日胃がキリキリしてくるような生活が続きました。
そんな武者修行中にコロナという大変なパンデミックが発生し、最初にオファーを受けた大学への勤務が難しくなり,新たな職を探すことになります。幸い、すぐに職は見付かったものの、「特任」という更に厳しい立場の仕事であって、1年更新の5年までという契約でした。たまたまですが、高専の頃の同僚教員から紹介された企業の方々と仕事をすることができていたため、収入的には変わることなく生活することはできていたものの、胃の痛さは倍増する始末です。こういった武者修行は家庭を持つ前に終わらせておくべきだな・・・と再認識した瞬間でもあります(学生結婚だったので・・・そもそも修行は家族で、でしたが一般論として)
1年更新で5年・・・というのも本当に大変な立場なので、みんなの味方JREC-INを見るのが日課という状況です。更新してもらえなければそれで終わりですから。毎日毎日自宅から通える仕事はないか探しては出し探しては出しの繰返しです。正直なところ、研究活動など本来やるべきことに注力する余裕もなくなります。任期付というのは家庭持ちには向いてないなと本当に思います。家を買うという大きな決断をしたあとの武者修行だったのでなおのことですね。
ようやく見付けた自宅近所の大学が現職の神戸松蔭女子学院大学でした。こちらには、言語科学研究所といって、文系大学でありながら言語処理などの研究も盛んに行っている研究部門があって、私の専門性ともマッチするということでテニュアトラック教員として着任することになりました。こちらでは、言語だけではなく、被服に関する研究やVRを使った研究など、様々な研究に関係することができ、とても良い経験を積むことができたと思っています。2024年の言語処理学会の年次大会では、自治体と生成AIみたいなワークショップを実施することもできましたし(その際は方々ご迷惑をおかけした記憶です・・・)、本当に研究環境として良かったと思います。
松蔭でテニュアを取得できれば良かったのですが、先に他大学から任期なしのオファーをいただいたため、ありがたくオファーを受けることとなりました。任期なしのオファーをいただいて断る理由がありません。また明日には、新しい所属を公表できればと思っています。
2018年4月から始めた私の武者修行は2025年3月で終了です。7年かかりましたが、ようやく落ち着いて仕事が出来る環境になるため、今後は今までとは違った働き方で大学への貢献を最優先として、様々なところに恩返しが出来れば良いかなと思っています。私のような箸にも棒にもかからないヘナチョコ研究者がこうしてこの業界で生きていられるのも、親身になってくださった元同僚のみなさま、私と関わりのあった学生さん達、学会関係者、地域企業の方々、古くからの友人・・・など、そして、こんな不安定な仕事をしていても私を支えてくれる家族がいたからこそです。私一人の力では何もできません。
こうして7年間の武者修行を終えることができ、ホッとしています。今まさに武者修行中の(若手の)みなさん、頑張って下さい。身の丈に合わないことをしていると思っていても、支えてくれる周囲の方々を大切にしていれば、きっと道は開けます。私のような人間にも道は開けました。2025年度からは気持ちを新たに頑張っていきたいと思います!