みなさま、こんにちは。おくむら(@nori_broccoli)です。
言った言わないに振り回されたことはありますか?
日常生活での言った言わないぐらいなら好きにすれば良いと思いますが、これがビジネスになると大問題です。発注したのにされていないことになったり、支払がなされなかったり、大きな支障が出てきます。そうした困ったプロジェクトに関わったことがあり、関係者に迷惑をかけてしまった反省から、Geminiに対処法を聞いてみました。開発において分業体制でデザイン部分を依頼していたのにその支払がなされなかったという酷い事案です。音声やメモなど確実な言質を取っていてもなお、仕事で言った言わないをしてしまう人への対処はどのようなものが考えられるでしょうか。

はじめに:なぜ「確実な言質」は無力化されるのか
プロジェクトのリーダーが「言った言わない」を繰り返す問題は深刻ですが、文字ベースのやり取りやミーティングの録音など、対策を講じたにもかかわらず、「発注していない」と主張されて取引先への支払いが滞る事態は、単なるコミュニケーションの問題を超えた、悪質な意図または構造的な問題を示しています。
あなたが取った対策は完全に正しかったものの、相手は「記録がある」という事実そのものを認めない、あるいは記録の法的・実務的な効力を巧妙に回避する方法を知っている可能性があります。
確実な言質を取った後で、なお相手が主張を撤回し逃げた場合、次のステップは「証拠の形式を法的に最も強固なものへ昇華させること」と、「組織の上層部や法務部門、または法的な第三者を迅速に巻き込むこと」です。
証拠を無力化する相手の本質と予防の限界
口頭でのやり取りを避けて文字化し、さらに口頭での発言を録音するという対策は、通常のビジネス環境であれば十分な抑止力となります。しかし、相手がそれを意図的に無視または否定する場合、単なる記録は「正式な合意文書」としての効力を持ちません。
従来の対策(文字化・録音)が機能しない理由
- 録音の解釈の余地:「検討する」「前向きにやる」といった発言は、具体的な発注を確定させる「言質」として弱く、後から「あれは意図確認の段階だった」と主張されるリスクがあります。
- 形式の欠如:メールやチャットでのやり取りは証拠になりますが、正式な「発注書」や「契約書」がない場合、法的には「契約の成立」が争点になりやすいです。
- 組織的権限の否定:リーダーが「個人的な会話だった」とし、自身の発注権限の範囲外だったと主張することで、会社としての責任を逃れようとすることがあります。
相手に「逃げ場」を与えないための文書化戦略
言質を単なる記録ではなく、「動かせない合意」に変えるためには、以下の3つの要素を徹底的に組み込む必要があります。
- 発注行為の明確化:発注内容、納期、対価(金額)を明記した「発注書」や「業務指示書」を必ず発行し、相手に受領させる。
- 議事録の共有と承認:ミーティング録音後、必ず議事録を作成し、特に発注や支払に関する決定事項については、リーダーからの「この議事録に記載された決定事項は承認済みです」という文言を文字ベース(メール等)で取得する。
- 金額と期日の具体的な明記:「この作業に対し〇〇円を、〇月〇日までに支払う」という具体的な文言を、文字ベースの記録に含める。
確実な「言質」を「法的な証拠」に昇華させる方法
既に記録(文字や録音)がある場合、その効力を最大化し、法的に逃げられない状況を作り出すことが重要です。
議事録の法的効力を高める署名・承認プロセス
作成した議事録や決定事項の確認メールは、ただ作成しただけでは不十分です。「受け取った」ことと「内容を承認した」ことは異なります。以下の手順で法的効力を高めてください。
- 決定事項を箇条書きにした議事録を相手に送付。
- メールで「本議事録の内容をもって、〇〇(作業名)の発注を確定するものといたします」と明確に記載。
- 相手からの返信で「承知いたしました」「確認しました」といった内容を取得する。(**最重要:返信メールを削除せず保存する**)
第三者証人の確保と内容証明郵便の活用
発注を否定された場合、証拠保全と今後の法的手段への移行のために、以下の準備を行います。
- 第三者証人の活用:会議の録音データがある場合、他の参加者(社内・社外問わず)に対し、その発言内容が真実であることを証言してもらう準備をする。
- 内容証明郵便:相手の発注(言質)記録を添付し、「貴殿の指示に基づき作業が実行され、契約が成立している。取引先への支払いを実行する義務がある」という通知を内容証明郵便で送付します。これにより、相手が受け取った事実と通知内容が公的に証明され、法的なプレッシャーをかけられます。

録音データの法的有効性を確保するための要件
ミーティング録音は強力な証拠ですが、裁判等で有効とするためには、以下の要件を満たす必要があります。
- 適法性:原則として、通話当事者の一方が録音することは合法とされます(一方当事者録音)。
- 証拠の連続性:録音データの改ざんがないことを証明できる形で保管する。
- 関連性:録音内容が、問題となっている「発注」や「支払義務」と直接関連していること。
言質を取っても逃げられた場合の「次の手」
今回のケースでは、発注を否定された結果、別の企業(取引先)への支払いが実行されなかったという重大な損害が発生しています。これは単なる社内トラブルではなく、契約不履行または不法行為に発展する可能性があります。
支払先(取引先)を守るための緊急対応
被害を最小限に抑えるため、速やかに以下の行動を取る必要があります。
- 取引先への状況説明:支払いが遅れている理由(PLによる指示の否定)を正直に伝え、証拠(録音、メールなど)に基づいて支払義務があることを確約する。
- 代替ルートでの支払交渉:社内の上層部や法務部門に対し、取引先への信用を守るため、PLの承認を待たずに支払いを実行させるよう強く働きかける。
証拠に基づいた組織的・法的手段の準備
個人で抱え込まず、組織の力、または第三者の専門家の力を借りる段階です。
- 上層部への報告:これまでの記録(文字化、録音)と内容証明郵便の控えをすべて準備し、会社としてのリスク(取引先からの損害賠償請求リスク、信頼失墜)を具体的に示して報告する。
- 弁護士への相談:今回の事例は、発注契約の成否、そしてPLの行動が会社に与える損害(背任行為の可能性)に関わります。証拠を持って、企業法務または契約トラブルに強い弁護士に相談し、民事訴訟(支払い請求)や民事調停の可能性を検討します。
特に、PLが意図的に虚偽を述べている場合、法的な手続きを通じて証拠を突きつけることが、最も効果的な解決策となります。
FAQ(よくある質問)
Q1: 録音は相手に知らせずに行っても裁判で有効ですか?
日本においては、原則として会話の当事者自身が行う「一方当事者録音(秘密録音)」は違法ではありません。プライバシー侵害などが争われるケースはありますが、特に悪質な発注逃れや契約に関する争いにおいては、証拠能力が認められる可能性が高いです。
Q2: メールでの発注確認は、正式な発注書と同等の効力がありますか?
法的観点から見ると、契約は必ずしも書面でなくても成立します(諾成契約)。発注書がなくとも、メールで業務内容、金額、納期、そして相手の「承知」または「承認」の返信があれば、それは契約が成立した証拠として十分な効力を持ちます。重要なのは、契約の主要な要素(対価と履行内容)が明確に記載されていることです。
Q3: プロジェクト完了後に、支払いを強制的に実行させる方法は?
発注を否定され、支払いが止まっている場合は、まず内容証明郵便で支払いを請求します。それでも拒否された場合は、弁護士を通じて「支払督促」を申し立てるか、民事調停、または裁判所を通じた少額訴訟(60万円以下の場合)を検討することになります。証拠が揃っているほど、これらの手続きは迅速に進められます。