職場としての高専

投稿日:2019年05月23日 |カテゴリー:Blog, 学校

みなさま、こんにちは。おくむら(@nori_broccoli)です。

アクセス解析をしているとどうも退職エントリへコンスタントにアクセスがあるようなので、職場としての高専について書いてみようかと思います。とはいえ、私が高専について書くとどうしてもネガティブなことばかりになってしまうので、読むとしんどくなるかもしれません。

念のためですが、私の10年の経験で知り得たこと、体験したことを書いているだけで、特定の高専について書いているわけではないのであしからず。研究的な話はこちら

人材的なところ

ものすごくできる人みたいなのはどこの高専にもいます。同様に、どうしようもない人もいます。ただ、その比率はというと大半が「どうしようもない人」に分類されてしまう残念な学校であることは確かです。どうしようもない人がどのぐらいどうしようもないかは書き出すとキリがないのですが、教育に走る(と言って研究をやめてしまった人)、権威的に振る舞う(ために人を蹴落としたり怒鳴り散らしたりすることに抵抗のない人)、存在を感じない(ぐらいにいるかいないか分からない人)といったところでしょうか。

ものすごくできる人は、どうして高専に残っているのかサッパリ分かりません。科研費もコンスタントに取っていて、企業との共同研究もやっていたりする、実績も申し分ないのになぜか高専に残っている・・・不思議な状況です。競争に疲れたとか、悠々自適にやりたいとか、いろんな理由は聞かせてもらいましたが、研究環境としては劣悪なので、そういうところに残り続ける理由はよく分からないです。別に教育がやりたいわけでもなさそうですし。

総じて、教員の質は良いとは言えません。高等教育機関とはいえ、博士どころか修士すら持っていない教員もいますし、専攻科の「特例認定」というものにボロボロ落ちていく様は本当に酷いものだったと思います。博士を持っていても学士の教育ができると思えません、と評価されるとはどういうことでしょうか。(認定を通すために実績を貸せ、とまで言われたことがあります)

若手の人材は、早い内に見切りを付けて脱走していきます。もちろん優秀な順にいなくなるので、私など中途半端な人間は脱走するまでに10年を要しましたが、せいぜい2〜3年程度です。若手が定着せず、どうしようもない人が残り続ける高専には未来はあるのでしょうか。

学生的なところ

高専に入学してくる学生はとても優秀です。少なくとも入学時点では中学校でトップクラスにいた学生がほとんどです。高専によってはそうでもないところもあるのですが、少なくともポテンシャルは高い学生が多いのです。そういった学生は大抵「教員より賢い」です。一方で、上記の「どうしようもない人」たちは、自分の方が偉いんだ!なぜ言うことを聞かないんだ!みたいな態度になってしまいがちで、学生から嫌われていたりもします。

東大や京大といったトップクラスの大学では、自分が面倒を見ている学生の方が賢い事なんて当たり前、ぐらいに先生方も考えておられると聞きました。そういう意識を持っていないと、本当に賢い学生に対する教育、指導なんていうものは成り立たないとのこと。確かにその通りだなと思います。私が高専に在籍していたときは、基本的に学生の方が賢いと思っていましたし、実際私なんかよりはるかにレベルの高いことをそつなくこなしてくれます。

学生からの評価も教員に対しては酷いものです。編入したり就職したりするために、教員は教員の役を演じ、学生は学生の役を演じている、そんな状況のように思えました。そこに「学び」というものが皆無のように見えたりします。

一方で、学生の質も徐々に変わってきていて、某高専では、3年生で実施できていた数学の授業が成り立たなくなり、4年生へ持ち上がる、みたいな事が起きています。どうしてこういうことになってくるかというと、高専という特殊な環境に学生を送り込んでくれる中学校側の調整が絡んできます。中学校としては、一つのことに特化しすぎている生徒を一般高校に送り込むことを躊躇する部分があるようで、そういった学生に高専を薦めます。

中学校でトップクラスの生徒というのは、大抵まんべんなくこなせるオールマイティキャラが多いので、一般高校のトップ校を受けさせるわけですが、中堅レベルである一カ所だけ突出してすごい生徒(数学だけできる、コンピュータだけ使える)を高専に入れてきます。そうすると、学力的には非常にアンバランスな状態なので、高専でも教養科目がありますから、ついていけなくなり授業が成り立たなくなります。

年々高専の偏差値は低下しています。大抵どこの高専でも公立トップ校の方が上のはずです。今でも公立トップ校と同レベルに保っているのは明石ぐらいじゃないでしょうか。入学してくる学生の質の向上は急務ですが、大学全入時代に高専を選ぶ前向きな理由が未だに見つけられずにいます。

学校運営的なところ

まず、「クラス担任」と「部活動」があるので、それだけでものすごい負担になります。休みがちな学生に連絡したり保護者と連絡を取ったり、中には家庭訪問まで行ったりと、担任業務は多忙を極めます。その上、「全員平等に、公平に」という信念の下、部活動の顧問を割り当てられるのですが、業務内容が部によってあまりにも違っていて、負荷が全く異なります。どう考えてもあの部とこの部では負荷は100倍ぐらい違うよな・・・みたいなのもザラです。この辺りの対応がまず大変です。

もちろん様々な委員会があります。特に、教務委員会と学生委員会に当たると異常な仕事量です。学校の教育をどういう方針にするか、といったところから、外部機関との渉外対応、入試の手配など、様々な業務が「教務委員会」としてまとめられているので、実質「学校委員会」かもしれないぐらい仕事に追われます。授業のエビデンス管理や認証評価の対応まで、ありとあらゆる対応を任されるので非常にしんどいですね。学生委員会も同様で、学生がコンビニで万引きしたみないなことがあると、コンビニまで出向いて謝ったり警察まで身柄を引き受けにいったり、というレベルまで仕事があります。

大学とは大きく異なる仕事としては、「寮の宿直」があります。どこかで公開されているはずなので書いても問題ないと思いますが、一晩7500円の仕事です。7500円の仕事内容はというと、学生の点呼をはじめとして、安全管理、不審者対策、火事等の有事対応、学生の悩み相談、寮の検食・・・などなど多岐にわたり、学生の命を預かる仕事という意味では、とても7500円では足りない責任のある仕事です。寮の宿直は私の最も苦手な仕事でした。何か起きると本当に大変なので・・・。

事務的なところ

大変優秀な事務の方ももちろんいらっしゃるというのは紛れもない事実だとしても、全般的に事務の方の仕事が遅いです。物品を発注する際に見積もりを取る必要があるのですが、会計担当はそんなことしてくれません。全部教員がやることになります。見積もりなんて事務仕事の典型では・・・?と思うのですが、動きません。新聞を読みながらコーヒーを飲んでいたりします。

教員の研究業績を出せ、という時期が毎年3月にあるわけですが、3つぐらいの部署から別フォーマットで依頼が来たりします。1つ渡すから後は勝手にどうぞ、と言っても、そちらのフォーマットではないので・・・と返ってくるわけです。フォーマットぐらい事務仕事で合わせてくださいませ・・・と何度も御願いした記憶です。くだらない仕事を生み出して、事務は「仕事をしている」感を一生懸命出しているのですが、効率化で半数の事務員を削減できそうな状況でした。(なので効率化しない)

そして、事務の人は「高専機構」という親玉しか見ていないです。現場で授業を回している教員のことは何も考えておらず、ただ親玉の高専機構がご機嫌になるように、しか考えていないため、教員にしわ寄せが行ってもお構いなしといったところ。大迷惑ですね。

まとめ

書き始めると無限に「高専のダメなところ」を書いてしまいがちなのでほどほどにしておきますが、これが氷山の一角だとしても、大変酷い状況になってきている高専に就職しようと思う人が少しでも思いとどまってくれれば・・・と思って書いています。私のところに「高専の教員ってどうですか?」と相談に来る博士の学生さんもいたりしますが、「あなたのいる場所ではないですよ」と答えています。高専出身で高専にどうしても戻りたい、という希有な学生さんはまだしも、一般高校から大学、大学院と進んだ王道ルートの博士の学生には勧められません。

もし、高専を職場に、と考えている方がいらっしゃれば、良いところも悪いところもいろいろお話しできますので、声をかけて頂ければ幸いです。ごく一部ですが、高専と波長の合う方もいらっしゃるので。