研究室スタート

投稿日:2017年04月10日 |カテゴリー:Blog

みなさま、こんにちは。おくむら(@nori_broccoli)です。

 

本日から授業が始まり、研究活動も再開しました。私が在籍している「高専」における研究の位置づけは、授業時間割に組み込まれた、実験実習にも近いものです。例えば、前期は月曜日の2限と火曜日の1限と水曜日の3限が「卒業研究」という時間として割り当てられており、その時間内+αで活動するというものです。大学とは異なり、空き時間は全部研究室にいて、研究活動その他いろいろやっている、というような感覚ではありません。

 

一方で、特に私が現在在籍している明石高専や群馬高専などは「編入」を強く打ち出しており、旧帝大の3年次(東大と京大は2年次)に編入できますよ!、センターを受けて受験するよりもアレですよ!、と売り出しています。そうすると、より一層、高専における卒業研究の位置づけが二極化していきます。具体的には、編入後の大学で活躍できるように、徹底的に卒業研究で基礎力を鍛えよう、というスタイルと、編入でいなくなってしまうなら最低限の体裁が整っていれば良い、という立場です。どちらも一長一短があって、前者の場合は確かに大学に入ったとき、特に研究室に配属されたときに、担当の教員からお礼のメールが届くほど気に入って頂ける(即戦力にして頂ける)こともある反面、高専での生活が激務になります。後者の場合は、大学に編入するための試験に専念でき、自分が目指しているよりも上の大学(何を以て”上”とするかは微妙なところですが)へ編入できる可能性が高まる反面、大学に入ってから「高専出てるんじゃないの?」と肩身の狭い思いをする可能性があります。

 

私は言うまでもなく前者のスタイルで研究室の運営をしています。そういった趣旨を理解してくれる学生が配属されるので、指導しても打てば響くしとても面白いです。編入を前面に打ち出しているものの、就職希望の学生にとっても、プレゼンテーション力の向上や文章力の向上など、一般的な技術としてそういった能力を身につけられる、ということでメリットがあります。昨年度異動してきたということもあって、昨年度は卒業研究を受け持っていなかったのですが、昨年度の後期から3名の学生の指導をしています。2名が進学、1名が就職ということで、進路決定のために色々と頑張っているタイミングですね。進学する2名の学生は、私の研究テーマの一つである「顔文字」に関して、JSAI2017(人工知能学会全国大会)で発表してくれます。といっても、私と愉快な仲間達が立ち上げたオーガナイズドセッションでの発表なので、アットホームな感じの発表になる可能性は高いです。

 

一人目の学生の発表は、「文章と顔文字の組み合わせによる感情推定」です。これは、前任校にいたときに学生さんが取り組んでくれたテーマを成仏させるための発表だったりするので、基本的には前任校にいたときの成果です。ただ、顔文字というのは不思議なもので、文章だけで想定した感情的な情報と、顔文字だけで想定した感情的な情報が一致していたとしても、文章と顔文字が合わさることで違った感情的な情報を生み出したりするのです。「あの人カッコいいよね!」というとポジティブな印象を受けますし、「(о´∀`о)ノ」という顔文字を見ても、ホッとしているような、やはりポジティブな印象を受けると思います。しかし、「あの人カッコいいよね(о´∀`о)ノ」のように組み合わせられると、なんとなくポジティブな印象は伝わるものの、どこか皮肉めいた印象になったりしないでしょうか? この例はあまり分かりづらいかもしれませんが、実際に、文章と顔文字の組み合わせで感情的な情報が変化する組み合わせが多数あり、ポジティブ+ポジティブ→皮肉というものが最も多く出てきます。この辺りの分析結果を発表してくれる内容になっています。

 

もう一人の学生の発表は、「ニューラルネットワークによる顔文字の原形推定」で、私が作成している大規模な顔文字辞書の中で、ある顔文字からその顔文字の原形を推定する手法に関する報告です。顔文字の原形と言ってもなかなかピンとこないかもしれませんが、例えば、(*^O^*)という顔文字も、(^O^;)という顔文字も、同じ(^O^)という顔文字に何らかのパーツ、この場合アスタリスクかセミコロンが付与された顔文字であると考えられ、(^O^)は他の二つの原形と見なせる、ということです。この原形が分かると何が嬉しいかというと、世の中に大量に存在している顔文字の中には、もちろん辞書に未定義の新手の顔文字があって、その顔文字に関する統計的な情報はうまく取れません。しかし、未知の顔文字の原形を推定できれば、原形にどのようなパーツが付加されているかによって、未知の顔文字の感情的な成分やその他の情報を推定することができるようになります。私たちの研究で分かってきていることの最も簡単な例は、顔文字に「#」というパーツが付加されると、ほぼ間違いなく「怒り」の成分を持つようになる、などがあります。こういったことが統計的に分かっていれば、原形を推定するだけで、種々の周辺情報を推定できるようになります。この、顔文字の原形推定のために色んな手法を試しているのですが、流行の手法であるニューラルネットワークを使った原形推定ができないか、ということを検証したのがこの論文の内容ですね。

 

ここでお気づきかも知れませんが、発表してくれる学生は高専の5年生、つまり大学で言うと2回生(2年生)に相当します。自分が大学の2回生だった頃を振り返ると、とても人に言えない遊び人だったわけで、こんな頃から学会で発表する経験を積めるというのは、とても羨ましい限りです。研究成果のページにも出していますが、いくつかの発表では賞を頂いたりしています。19歳、20歳の学生が、奨励賞とはいえ学会から立派な賞を頂けるということは、今後の人生で大きな励みになると思います。論文誌に通したり、国際会議に通したりということはなかなかできません(やってます)が、全国大会での発表であれば高専の学生でも十分に良い発表ができますし、そういった経験があれば、大学に行っても重宝してもらえると信じています。

 

さて、今年もしっかり指導を頑張って、良い学生を育てていきたいですね。